子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 彼を不快にさせてしまっている――と喉を震わせたのも束の間、突然抱き締められる。

「泣き顔を晒されるのは困る。これなら、他人に見られてもまあ誤魔化せるだろ」

 涙なんてもう引っ込んでいた。

 全身に感じる保名さんのぬくもりは、先ほど触れてきた男性と違って心地よい。

 いつも彼は私に触れる時、少し乱暴で荒っぽかったのに、今はとても優しく背中を撫でてくれる。

 私は今、夢でも見ているのだろうか?

 でも顔を押し付けた胸からは保名さんの鼓動を感じるし、私自身の鼓動もどこかおかしくなったのかと思うほどうるさい。

 きれいだと言われた時よりも顔が熱くて、息の仕方を忘れそうになった。

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