子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 気持ちは落ち着くどころか、ますます困惑と恥ずかしさとうれしさで収拾がつかなくなる。

「あ、の、ごめんなさい。すみません」

 かろうじてこぼれ出たのは謝罪だ。

 こんな状態では顔を上げられず、保名さんの広い胸に向かって話しかける羽目になった。

「謝らなくてもいいが、なにがあったかは教えろ。おまえがあの人に声をかけたんじゃないのか?」

「ちが……違います。お菓子……食べようと思って。そうしたら……」

 遠慮のない、人をものとして捉えているような手つきを思い出して、また瞼がじわりと熱くなる。

「こわ、かっ……た……」

 絞り出した声を保名さんはちゃんと聞いてくれた。

< 158 / 381 >

この作品をシェア

pagetop