子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 私の背中を撫でていた手が頭に滑り、整えられた髪形を崩さないように触れる。

「泣くほど嫌なら声を上げればよかっただろ」

「迷惑に、なるから」

「……誰の」

「保名さんの……」

 微かに息を呑む気配がしたけれど、また涙があふれ出したせいで気にする余裕がない。

「妻らしくしなきゃいけないと思ったんです。結婚しただけでも迷惑をかけたから、今日は問題を起こさないようにしなきゃって。離婚するまではちゃんとしたかった……」

 ごめんなさい、とまた止まらなくなった涙で声を濡らしながら繰り返す。

 結局、保名さんを大事なパーティーの場から連れ出して迷惑をかけてしまった。

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