子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 どこまで私は不甲斐ないのだろう。離婚までの決して長くはない時間でさえ、彼を困らせている。

「ごめんなさい。ごめんなさい……」

「いいから。……もういい」

 頭を引き寄せられて、保名さんの胸に再び顔を押し付けられる。

「今日はもう帰ろう。俺も用事は済ませたから」

「で、でも、ご招待を受けたのに」

 全身の血の気が引くのを感じながら顔を上げて言うと、目尻を親指で拭われた。

 思いがけず甘く優しい指先に、こんな時にもかかわらず胸が騒ぐ。

 保名さんは私の涙を拭いながら、目を細めて言った。

「泣き顔の妻を連れてパーティーには戻れないだろ」



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