子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 家族が嘘を吐いているからだ、と言うのもおかしい気がして、黙って竹の菓子切りで水まんじゅうを切り分ける。

「……着物を褒めたくらいで照れるとは思わなかったな」

 四等分したひと切れを口に入れるのと同時に、保名さんが呟く。

 とろりと舌をまろやかに包む上品なあんの甘さと、ぷるんと口の中で弾む生地がとろけて喉に滑る。控えめな涼やかさは、泣いたせいか火照った喉に心地よく染み込んだ。

 彼がどうしていつも冷蔵庫にこれを入れているかわかった気がする。久黒庵の水まんじゅうは信じられないほどおいしい。

「あれもごめんなさい。お世辞だってわかってたんですが……」

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