子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「思ってもないことなんか言えるか」

 もうひと切れ口に運ぼうとした手が止まる。

 顔を上げると、保名さんは顔をしかめていた。

「きれいだと思ったから言っただけだ。別にお世辞で言ったわけじゃない。おまえが照れるからこっちまで恥ずかしかった」

 目を合わせてくれなかった彼を思い出し、急に気恥ずかしくなる。

 彼もまた私を褒めて照れ臭くなったから、顔を見られなくなったのだろうか。てっきり顔に出るほど喜んでしまったから、呆れているのかと思っていた。

「さっきだっていきなり泣くしな。俺がどれだけ焦ったと思う?」

「ごめんなさ――」

「また謝ったら離婚するからな」

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