子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 言っている意味がわからずにいると、保名さんの指がなんの前触れもなく私の唇をつついた。

「正直、おまえがどういう奴なのかまだわからない。聞いた話が全部間違ってるんじゃないかと思ってるが、やっぱり騙されてるんじゃないかって気持ちもある。どっちなんだ?」

「……私が保名さんを騙したのは、結婚式の時だけです。本当に望まれてるのは弥子だってわかっていて、あの場に立ったので」

「別に妹の方を望んでたわけじゃない。向こうが婚約者だって聞いてただけだ。というより、姉の話はそういう意味で一度もされなかったな。おまえのことはいつも、困った娘がいる、というふうに聞いてた」

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