子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 すう、と凪いだ寝息が聞こえて、安堵と再び湧き上がった罪悪感で胸の奥を焼かれる。

 ベッドの側に座っても、目を覚ます様子はなかった。よほど疲れたらしい。

 あどけなくすら見える寝顔は穏やかで、先ほど見せた甘える表情とは全然違う。

 あんな顔を見せたのは俺にだけか、と思うと、また込み上げるものがあった。

 なぜ、彼女の家族はあんな嘘を流したのだろう。

 なぜ、彼女は妹の代わりに花嫁を務めたのだろう。

 これまで俺は彼女の話を聞こうともせずにひどい態度を取った。

 どんなに責められても文句は言えないが、彼女は戸惑う俺に繰り返し言ったのだ。

「妻としての役目を果たせてよかったです」
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