子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「どうして……」

「他に連絡してくる理由がない。それに、声が震えてた。泣いてただろ」

 どうして、ともう一度心の中で問う。

 気付いていたのに、彼は知らない振りをしたのだ。

 私の疑問に気付いたかのように鼻を鳴らすと、保名さんは更に続ける。

「電話越しじゃ手を握ってやれないからな」

 三度目の『どうして』が心の中でこぼれる。

 何事もなかった振りをしたのは、離れた場所で事情を聞いても私の手を握れないのが理由だと、彼は言った。

 手を握ってやりたいと思ってくれた事実がうれしくて、鼻がつんとする。

「なにがなんでもない、だ。だったら最初から電話なんてしてくるな。心配する」

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