子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「つらくても保名さんが絆創膏を貼ってくれたから。痛いの痛いの飛んでいけって言ってくれたから。だから私、頑張れたんだよ」

「……知らなかった」

 保名さんはぽつりと言うと、私をきつく抱き締めた。

「あの程度の優しさに救われるくらい、つらかったんだな」

 つらかったわけじゃない、ただ寂しくて悲しい毎日だっただけ――。

 でもそれは言葉にならなかった。自分でもわけがわからないくらい涙が止まらなくて、声がすべて嗚咽に変わる。

「もしあの瞬間に戻れるなら、宝来の家から攫ってやるのに」

 背中を撫でる保名さんの手はやっぱり優しくて、彼への想いがいっぱいにあふれる。

< 250 / 381 >

この作品をシェア

pagetop