子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「離婚なんかするわけないだろ。俺が好きなのはおまえだけだ」

 世界中の音が一瞬で消えたのかと思うほど、保名さんの言葉ははっきりと私の耳に届いた。

 涙でぐしゃぐしゃの顔を上げると、彼の袖で涙を拭われる。

「嫌な女だって思ってた時から、笑った顔に惹かれてた」

「私なんか、好きじゃないのかと思ってた。一度も好きって言われなかったから……」

「言えると思うか? おまえに散々ひどいことを言ったくせに、図々しいだろ」

 でも、と保名さんが私を抱き締める腕に力を込めた。

「言う資格はないって思うくせに、何度も抱いたんだ」

 彼の葛藤と後悔を感じながら、広い胸に顔を埋める。

< 251 / 381 >

この作品をシェア

pagetop