子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 首から報道スタッフという札を提げた人々が、カメラや録音機器を手に忙しなく走り回っている。

 私はというと、保名さんが選んでくれた着物を着て、久黒庵のスペースに立ち尽くしていた。

「チラシは? ここにあるだけですべてじゃないだろ。それから、そこの荷物を奥に持って行ってくれ。もう開場してるんだぞ」

 保名さんは率先して久黒庵の人々に指示を出していた。

 彼が後継ぎの仕事をしている姿は初めて見るが、慌ただしい現場でも冷静に対処する姿が頼もしい。

 久黒庵のスペースは、まるで店がそのままこの場に移されたかのようになっていた。

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