子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 ぐっと父が言葉を呑み込み、ばつが悪そうに口ごもる。

 私がやったという事実を私自身知らないくらいなのだから、父が現場を見ているはずがない。

「少し落ち着きましょう、葛木さん。誤解があるようだから」

 母がやんわりと言うも、保名さんはそれを一蹴した。

「もう誤解が解けた後なんですよ。どちらにせよ、琴葉と離婚するつもりはないのであしからず」

「どうしてもと言うのなら止めませんけれど。でもその子は、料理のひとつもまともにできない役立たずですよ?」

 ずきんと強く胸が痛んで、顔を上げていられなくなった。

 少しずつ上達しているとはいえ、私は母の言うように料理さえできない役立たずだ。

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