子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 保名さんはソファに置いていた自身のジャケットを羽織ると、玄関へと足早に歩き出した。

「……いや、やっぱりもう料理はするな。材料と時間の無駄だ」

 唯一まともだったトーストの端を口にくわえ、保名さんが靴を履く。

「夜は食べて帰る。そっちはそっちで好きにしろ」

「……はい。家にあるものを使っても大丈夫ですか?」

「常識の範囲内でなら」

 行ってきますも言わず、彼は私を避けるように出て行った。

 とぼとぼとダイニングに戻り、使われなかったグラスを片付ける。

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