子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 料理があんなにも難しいものだなんて知らなかった。母や弥子が昔から言ってきたように、私は簡単な家事さえできないどうしようもない人間なのだろう。

 冷蔵庫を開けた手が止まり、ずきんと胸が痛んだ。

 保名さんの残したサラダとスープ、そして裏側がカリカリに焦げた目玉焼きがラップに包まれている。

 捨てずにいてくれたのだという安堵と、彼が言うように食材を無駄にしてしまったという罪悪感で泣きたくなった。

 まだ温かいスープを冷蔵庫から出し、テーブルまで運ぶ。食べ残しの処理は、実家でも私が担当していた。

「……しょっぱい」

 初めて作ったスープは、舌が痺れるほど塩辛い。

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