子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 保名さんが好きだ。だから、つらい。

「……あっ」

 つるりと手が滑り、グラスを流し台に落としてしまう。

 声を上げた時にはもう遅く、薄いガラスが欠片となって散らばった。

 保名さんの家のものを壊してしまった。

 全身の血の気が引き、手が震える。

 先に謝罪だろうか。いや、まずはこの場を片付けてからだろう。

 彼も私の失態を怒るに違いない。父や母のように叩きはしないと思いたかったけれど、不甲斐ない私をしつける必要があると判断したら、どうなるかわからなかった。

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