子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 流しっぱなしだった水を止めて、すぐにガラスの破片を集める。ひとつでも残してしまったら、保名さんがキッチンに立った時に怪我をしてしまうかもしれない。

 余計な考え事などをしていたからこうなったのだ。真面目にやらないから一日で仕事を終えられないのだと、何度母に叱られたか忘れたわけではなかったのに。

「痛っ……」

 指先にちくりと痛みが走り、拾おうとした大きめの破片から手を離す。

 咄嗟に手を見ると、人差し指に赤い血の珠が浮かんでいた。どうやらガラスで切ってしまったらしい。

 本当に、今日はなにをしているのだろう。

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