子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 怪我の箇所を軽く水で流してから、手当てより先にこの場を片付けてしまおうとした。

 だけどそこに足音が聞こえて動きが止まる。顔を上げると、部屋から出てきた保名さんがいた。

「なんの音だ?」

 ごめんなさい、と言わなければならないのに、怒らせてしまうと怖くなって声が出てこない。

「なにか割ったのか?」

 再び質問されたけれど、やっぱりなにも言えなかった。

 保名さんは顔をしかめたかと思うと、まっすぐキッチンへやってくる。

 そして、バラバラになったグラスに気付いたようだった。

「ご……ごめんなさい」

 ようやく声が出たものの、呼吸音にさえ紛れて消えそうなほど小さくか細い。

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