追放されたチート魔導師ですが、気ままに生きるのでほっといてください
 久しぶりの屋根がある部屋にふかふかのベッド。魔獣をモフるよりはいくらか満足度は下がってしまうが、ずっと野宿生活だったときと比べれば天国だ。

「……パナムのシチー、美味しかったな……」

 シチーの味を思い返しながら、次第にうとうとと夢の中に入っていくプリシラ。

 ──そんな彼女の元に「とある事件」が舞い込んできたのは夜明けを迎える前だった。

  

  ◆◇◆

  

 酒場の二階で寝ていたプリシラは何かを叩く音で目を覚ました。

 夢でも見ているのかとしばらくぼんやりしていると再び戸が叩かれた。どうやら夢ではないらしい。

 聞かないふりをして惰眠を貪ろうかと思ったが、コンコンと三度目のノックが優しく響く。

「……誰よ、もう。こんな早くに」   

 窓から見える空は少し青みがかってきてる。あと一、二時間もすれば夜明けだろう。

 聖職者の一日は夜明け前に始まり、農民の一日は夜明けとともに始まると言われている。触覚魔法を使って獣を狩るために森に出ていたプリシラも朝は早かったのだが、早起きは大の苦手だった。

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