白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 王都の西のはずれにある小さな城、通称“花の離宮”。もともとはラーウスの古民族たちが妖精王と対話するための神殿だったというが、アルヴスの人間が渡る以前より廃れ、荒れ放題になっていた。初代スワンレイク王はそれを修繕し、アルヴスから持ってきた薔薇の花を植えさせ、来客を迎える際の離宮へと生まれ変わらせた。
 ふだんは使用人だけが手入れのために暮らしている小さな城を、あろうことか王はウィルバーに貸すという。いま暮らしている邸では何か不都合があるのだろうか。

「あの離宮には、罪人を裁くための美しい監獄が眠っているのだよ」
「監獄!?」
「罪人を捕らえ、拷問の末に処刑を行ったラーウスの古民族たちの負の遺跡で、魔力が強いがゆえに改修できなかったのだ」
「そ、そんな物騒な場所で夫婦水入らずっておかしくないですか!?」
「花の離宮自体はなんら問題ない。なんせお前の妻はあのノーザンクロスの姫君だ。魔力にあてられる心配もない」
「はあ」
「もともとが神聖な場所だからお前にとっても都合が良いはずだぞ?」
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