ソーダ水に溺れる

『よかったらもらってくれない?』

500mlサイズのそれを差し出され、反射的に受け取る。

ラベルには、" 爽快!レモンソーダ! "とポップな文字がでかでかと書かれている。どうやらレモン25個分のビタミンCがこの一本にまるごと凝縮されているのが魅力らしい。


『炭酸苦手?』

『そんなことはないけど、』


むしろ好きだ。シュワシュワとした痛いくらいの炭酸が喉を刺激する、あの感覚は中毒性がある。


『さっき自販機で間違えて押しちゃったんだよね』


俺が欲しかったのはこっち、そう言って机の上にあるペットボトルのキャップを人差し指でトントン、と叩く。残り4分の3程度になった中身は穏やかな波を描いた。

同じメーカーの炭酸ジュース。でも彼の手元にあるジュースはレモンソーダではなく普通のソーダ。


『レモン、苦手なの?』

『んー、酸っぱいのがムリ』

実際にレモンを口に入れたかのように顔を顰めるから、ほんとに苦手なんだな、と少し笑ってしまう。
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