ソーダ水に溺れる

" 来る者拒まず、去る者追わず "

いつの日か聞いた、誰かの台詞が耳の奥で鳴る。


" 水瀬ってめっちゃイケメンじゃない? "

" わかるー!でもなに考えてるのかわかんないんだよねえ "

" えー? そういうとこも含めていいんだよ! あたし1日でいいから付き合ってみたい "


食堂でそんな会話が聞こえたことだってあるし、実際キャンパス内でも女の子と腕を組んで歩いている姿も見かけたことがある。

だから正直なところ、第一印象はよくなかった。

けれど、悪い人ではないなって。
たった数分言葉を交わしただけの彼に、そう思った。



それからというもの。授業がけっこう重なっていることを知って、その度に軽い挨拶を交わすようになって。

一緒のアパートに住んでることを知ったのは、それからすぐのことだったような気がする。





「危ないよ」

ぱし、と捕られた右手首。水瀬の視線の先を辿ると、そこには先日の雨の名残であろう小さな水たまりがあった。

そこまで懐かしくもない記憶をなぞっていたせいで、危うく私の左足が水で滴るところだった。


「あ、ありがとう」

「どういたしましてー」



ほんとう、恋とは不本意に落ちるものだ。
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