仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「違いますから!」
速否定したユーリスにほっとしたフローラと皇帝。
だがまだ疑いが晴れたわけではない。
「じゃあ新婚のくせに家に帰らず何をやっているんだお前は!」
「それは……」
ユーリスは理由は言いたくないのか言い淀むものだから皇帝はじろりと睨んだ。
「言えないことをしているというのか?」
「……はあ、そんなことはありません。ただ、もう少し内緒にしておきたかった」
 諦めたようにため息をついたユーリスはフローラをある部屋へと連れて行った。
皇帝はついてこなくてもいいと言っても勝手についてきた。
着いた先は宮殿内にあるゲストルームの一室。
ユーリスに宛がわれた、たまに泊まり込むときに使っている部屋だ。
「部屋の中は少し散らかっているからあまり見せたくないのだが、フローラ、君が心配することはなにもないから。そんな不安そうな顔をしないで」
ドアの前でフローラの頬を撫でたユーリスにフローラもぎこちなく笑顔で返す。
この中になにがあるのか。
やはり少し不安なフローラは思わずユーリスの袖をつかんだ。
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