仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
***

とある昼下がり。
久々に悪夢にうなされたユーリスは仕事が休みだというのに私室に籠り鬱々としていた。
夢の中、自分の顔を見て恐れおののき逃げる女性。
その女性を捕まえたユーリスは服を引き裂き侵してしまう。
やめろと叫び止めようとする理性のある自分と、体の中に渦巻く劣情が抑えきれない自分がいる。
恐怖で泣き叫ぶ女性の首に手をかけその女性がフローラだと気づき驚愕して目が覚めた。
汗でじっとりと濡れる寝間着の胸元ををぎゅっと掴む。
(私はフローラを……まさかな)
自分の中に得体のしれない狂気があるのに気づいてなんておぞましいんだと落ち込んだ。
フローラと顔を合わすのも怖くなって今日はほとんど目も合わせず引き籠ってしまった。
彼女が心配そうにこちらを見ていたのは気づいている。
冷静になると悪いことをしたなと思い、後で少し話をしようかと思ってみたり、今頃また刺繍の練習に没頭してるのかもと考えてみたり気が付いたらフローラのことばかり考えていた。

コンコンとノックの音が聞こえて我に返る。
「ユーリスさま、あの、ご一緒にお庭をお散歩しませんか?」
返事をするとひょっこり顔を出したフローラが遠慮がちに誘うと、ユーリスは目を見開き考える間もなく無意識に頷いた。
彼女の笑顔を見るとさっきまでの鬱々とした感情が一気に霧散して、会いに来てくれたことに喜びを感じていそいそとフローラと共に部屋を出た。
おしゃべりなフローラの話を黙って聞きながらの散歩はいい気分転換になった。
少しづつ少しづつ心を通わせていくふたりの姿を微笑ましく屋敷の者たちがそっと見守っていた。
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