仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
フローラは朝会ったときなんとなく元気のなかったユーリスのことが気になって声をかけてみたのだが、珍しくユーリスが頷いたことにうれしくなって自然と笑顔が多くなる。
「ほら、バラが綺麗に咲いてますよ!とってもいい香りです!」
フローラがそっと大輪の花に手を伸ばすとユーリスも手を出していた。
花弁の上で手が重なる。
気が滅入っていたからかユーリスは自分の左手が手袋をはめていないと今初めて知った。
いつもは手袋越しで手を繋ぎエスコートもするというのに素手でフローラに触れたのは初めてで驚き手を引っ込めた。
ほんのちょっと触れただけで飛び退いたユーリスは、すまないと言って踵を返して去ってしまった。
「ユーリスさま!?」
呆然とユーリスの後姿を見送り「気を悪くしてしまったかしら」とユーリスと触れてしまった手を握り悲しくなったフローラはしばらく佇んでいた。
火傷している右手には手袋がしっかりはめられていてそれにはほっとしたが、その右手で口元を覆いながら足早に私室に帰ったユーリスはデスクに両手を突き早鐘を打つ心臓の音を感じていた。
(何を、動揺してるんだ)
素手で触れただけで凪いでいたはずの感情が激しく鼓動した。一瞬のうちにもっと触れたい衝動と、それと同時に今朝の悪夢を思いだして自分の中にある狂気に焦ってしまった。
それもこれもいらない情報を植え付けてくるあの人のせいだ、とぼけた顔の皇帝を苦々しく思い出す。
あれはまだユーリスが十三歳になったころの話だ。
「ほら、バラが綺麗に咲いてますよ!とってもいい香りです!」
フローラがそっと大輪の花に手を伸ばすとユーリスも手を出していた。
花弁の上で手が重なる。
気が滅入っていたからかユーリスは自分の左手が手袋をはめていないと今初めて知った。
いつもは手袋越しで手を繋ぎエスコートもするというのに素手でフローラに触れたのは初めてで驚き手を引っ込めた。
ほんのちょっと触れただけで飛び退いたユーリスは、すまないと言って踵を返して去ってしまった。
「ユーリスさま!?」
呆然とユーリスの後姿を見送り「気を悪くしてしまったかしら」とユーリスと触れてしまった手を握り悲しくなったフローラはしばらく佇んでいた。
火傷している右手には手袋がしっかりはめられていてそれにはほっとしたが、その右手で口元を覆いながら足早に私室に帰ったユーリスはデスクに両手を突き早鐘を打つ心臓の音を感じていた。
(何を、動揺してるんだ)
素手で触れただけで凪いでいたはずの感情が激しく鼓動した。一瞬のうちにもっと触れたい衝動と、それと同時に今朝の悪夢を思いだして自分の中にある狂気に焦ってしまった。
それもこれもいらない情報を植え付けてくるあの人のせいだ、とぼけた顔の皇帝を苦々しく思い出す。
あれはまだユーリスが十三歳になったころの話だ。