仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
翌日の夕刻時、早めに屋敷に戻ったユーリスは花壇に佇む庭師のセドリックを見かけた。
大男の彼は体格に似合わず花をこよなく愛し作業も丁寧だ。ユーリスの二個上で年も近くのんびりした話し方が特徴でユーリスも彼を気に入っている。
いつもならユーリスの乗る馬車が通れば軽く会釈するというのに今日は気づいていないのか背中を向けたままだった。
それが気になり玄関前で馬車を降りたユーリスがセドリックに近づいていく。
「これも綺麗だわ、セドリックこれも摘んでいいかしら」
「いいよお」
最近聞きなれてきたかわいい声とのんびりしたセドリックの声が聞こえてユーリスは足を速める。

セドリックの大きな体に隠れて花壇にしゃがんでいたのはフローラだった。彼女はセドリックを見上げて微笑み、差し出された手を取って立ち上がる。
気兼ねなく触れあうふたりを見てユーリスの心臓がじくりと痛んだ。
「いい香り、たくさん摘んだわね」
セドリックが持っているかごには薄桃色のバラ。そこに鼻を寄せ香りを嗅ぐフローラにセドリックもうんうんと頷いてにかっと笑った。
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