仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う

その日の晩餐のテーブルの上にはフローラが活けたバラが飾られ、その後話をするため移動した居間にも飾られていた。
相変わらずユーリスはあまりしゃべらず、フローラは今日あったことを話しそれに相槌を打つくらいだ。それでもフローラはうれしそうに笑う。
その笑顔に癒されている間にお茶を用意したマリアにもフローラは笑顔で話しかけた。
(フローラ嬢は屋敷の者とずいぶん打ち解けて楽しそうだ)
ベリルも会話に入り三人で盛り上がっているのをユーリスは傍から感慨深く見ていて焦燥感にかられた。
(まだ打ち解けられない自分とは大違いだ)
マリアやベリルに向ける笑顔がこちらに向けばいいのにと秘かに思う。
打ち解けられないでいるのはユーリスだけなのだが、誰に対しても笑顔で話すフローラを見てユーリスはなんとなくもやもやするものが沸き上がり胸を押さえた。

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