仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「ん?」

コンコン

…………

耳をすませてみてもシーンと静まり返っている寝室の中。
「もうどこかに行ってるのかしら?それともまだ寝てるの?」
ひとりごちたフローラはドアノブに手を掛けるとドアはすんなり開いた。
居ないのなら勝手に入るのは憚られるけど、もし寝ていたら起こさないといけない。
起こしに来たのが本来の目的なのだ、フローラは胸をドキドキさせて初めて入るユーリスの寝室に足を踏み入れた。
「失礼いたします。ユーリスさま起きてらっしゃいますか?」
声をかけたが返事はない。
カーテンが引かれているからまだ寝てるのかもしれない。薄暗い広い部屋には厚い天蓋付きの大きなベッドがあり中は見えないので姿は見えなかった。
まずカーテンを開けようと中に入る。
「ユーリスさま、朝ですよ。カーテン開けますね」
声をかけながらカーテンを開き明るくなった部屋を見回す。
ベッドのほかにはデスクとチェスト、窓際の丸いテーブルにフローラの活けた花が飾られている。
とてもシンプルだけどセンスのいい部屋はユーリスらしいと思った。
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