訳あり無表情少女と一途な旦那 〜異世界編〜

「!?」
「レン!?何が大丈夫なんだよ!?」
「姉さんなら治せる」
「! 何でチビが治せんだよ!?」

コイツ等が焦ってる中、レンとシオンは落ち着いてる
試験の時からそうだ
3人共、どんな魔物が相手でも冷静に戦いを見てる
お互いがお互いを信頼してるんだ
そして、今回で俺ん中の疑惑が確信になった
何で試験の時、チビの攻撃だけ色が見えなかったのか…

「お前等いい加減大人しく黙って見てろ、死ぬぞ」
「「…っ」」

そうこうしてる内にチビは魔物を倒していく

…にしても、俺達に迫る魔物まで気付いて俺を叫んだ
あの魔物は気配を消すのにも長けてる
俺でさえ分からなかった魔物の位置を、チビは把握出来た

「にしても、SSランクを貰ってんのに時間掛かり過ぎじゃねぇか?」
「だよな?魔物が強いとはいえ、こんだけ掛かるのはやっぱり弱いからじゃねぇのか?」

ブツブツ文句を言ってる奴等が俺を見る

「アンタがまた力貸してんじゃねぇの?」
「その為に付いてきたんじゃねぇのか?」
「…、はぁ…」

思わず溜息が出る

「ここまで来といて、まだそんな事言ってんのか
 っつうか、時間掛かってんのは俺が頼んだ事で
 お前等の為にしてもらってんだぞ?」
「「「え?」」」
「チビは、恐らくあの魔物でもすぐに討伐出来る
 だが、それだけじゃお前等は納得しねぇだろ
 だから予め言っておいたんだ
 コレは見せる為の討伐だから、わざと時間を掛けろとな」

チビの周りには何十体もの魔物が倒れてる
残る魔物は、あと1体
唸り声を上げて襲い掛かるが
チビは緑の魔力を纏い、風の速さで魔物の後ろに移動し跳躍する
魔物が振り向いた瞬間、ドゴッ!と踵落としを喰らわした
その一撃で魔物は倒れ、チビは軽い足取りで巣に手を翳す
すると、巣はどんどん塵になっていく
魔物にも翳せば、同様に
数秒後には、何も無い更地に
周りが唖然とする中、チビが戻ってくる

「ご苦労だったな」
「流石にあれだけの数は疲れたんで、もう帰りたいんですけど…」

疲れたっつって、息切れすらしてねぇじゃねぇか

「その前に、アイツ等…」

ロギア達を指差し

「お前なら治せるんだろ?」
「…はぁ」

面倒くさそうな溜息を吐きながらロギア達の元へ
チビが目の前まで行くと

「お、お前なんかに…っ、治せんのかよっ…!?」
「君に診てもらう位なら、ちゃんとした医者の所に行くよ…っ」
「そうよ!2人はああ言ったけど、治癒なんて出来ないんでしょ!
 ラーガ!さっさとギルドに戻してよ!」

いつまでも文句を言うロギア達を前にチビは俺に顔を向ける
口しか見えねぇが、苛ついてんな

「はぁ…」

仕方無い
チビの側に寄り、ロギア達と周りを見渡す

「お前等、いい加減にしろ
 コイツの実力は分かっただろ
 レンとシオンに護られる様な弱い奴じゃねぇ
 SSクエストを…、
 色んな所をたらい回しにされてた厄介なクエストを
 お前等の目の前で、1人で終わらせたんだ
 正真正銘、SSランクの称号を与えるに値する実力者だ
 これでもまだ疑うか?」
「「「…」」」
「チビ、とにかくコイツ等治してやってくれ
 本当に死んじまう」
「…」

チビがロギア達に手を翳すと、傷はみるみる内に治っていく

「おい (体の)内側見れる奴いるか?」
「あ、はい!私出来ます!」
「毒が残ってないか見ろ」
「はい!」

1人にロギア達を見てもらうと

「…っ、ありません。一欠片も…っ!」
「よし 治癒も出来るって分かったな
 お前等、コレで納得しただろ」
「「「…」」」
「とりあえず、ギルド戻るぞ」

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