あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~


そんなある日、たまには気晴らしになればと和花をパーティーに誘った。
クリスマスより少し早くに開かれる、水河法律事務所の内輪の忘年会だ。
所長の妻が華やかなことが好きなので、毎年開いているものだ。

「事務所の忘年会があるんだ」
「忘年会?」

「水河法律事務所のメンバーと家族のための会で、毎年恒例なんだ」

喜んでくれるかと思って和花に話してみたが、表情を変えない。

「今年は、君にも参加して欲しいって所長から言われてね」

「莉里さんのお父様から?」
「たまにはふたりで出かけないか? 玲生はシッターさんに預かってもらえるだろう?」

「そうね……」

和花はパーティーに興味はなさそうだったが、贔屓客のひとりの莉里もいると言ったらその気になったようだ。

「高原さんも遅い時間まではダメだから、あまり長くいられないけど。それでもよければ」

「助かるよ。やっと君を正式に所長にも紹介できる」

「わかってるわ。余計なことは喋らないから安心してください」

和花はなにか思うところがあるような口ぶりだ。

「和花……なにか心配事でもあるのか?」

「いいえ、大丈夫よ」

その言葉を信じた樹は、パーティーの話はそれ以上はしなかった。











< 113 / 130 >

この作品をシェア

pagetop