あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~
そんなある日、たまには気晴らしになればと和花をパーティーに誘った。
クリスマスより少し早くに開かれる、水河法律事務所の内輪の忘年会だ。
所長の妻が華やかなことが好きなので、毎年開いているものだ。
「事務所の忘年会があるんだ」
「忘年会?」
「水河法律事務所のメンバーと家族のための会で、毎年恒例なんだ」
喜んでくれるかと思って和花に話してみたが、表情を変えない。
「今年は、君にも参加して欲しいって所長から言われてね」
「莉里さんのお父様から?」
「たまにはふたりで出かけないか? 玲生はシッターさんに預かってもらえるだろう?」
「そうね……」
和花はパーティーに興味はなさそうだったが、贔屓客のひとりの莉里もいると言ったらその気になったようだ。
「高原さんも遅い時間まではダメだから、あまり長くいられないけど。それでもよければ」
「助かるよ。やっと君を正式に所長にも紹介できる」
「わかってるわ。余計なことは喋らないから安心してください」
和花はなにか思うところがあるような口ぶりだ。
「和花……なにか心配事でもあるのか?」
「いいえ、大丈夫よ」
その言葉を信じた樹は、パーティーの話はそれ以上はしなかった。