あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~
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樹からは法律事務所の内輪のパーティーと聞いていたが、和花が指定されたホテルに行くとかなり大掛かりなものだった。
クリスマスの飾りつけも華やかだったし、立食とはいえ食事も豪華お酒の種類も豊富だ。
事務所のスタッフやその家族、取引先まで合わせるとかなりの人数が集まっていた。
和花は人の多い場所に出かけるのは少しばかり気が重かった。
和花と樹の電撃結婚について、悪い噂ばかりが広まっているからだ。
それでも莉里はアンティークショップの上得意だし、友人たちにも宣伝してくれている。
その父親である所長の誘いだというのに断ったら、樹の立場が悪くなるかも知れなと思って出席していた。
今日の和花は、ベルベットのアンティークドレスに長いパールのネックレスだけを身に付けたシンプルな装いだ。
あまり目立ちたくなかったのだが、ダークスーツ姿の樹と並ぶと周りからため息が漏れた。
まず所長夫妻に挨拶に行くと、興味津々といった感じで所長の妻が和花に声を掛けてきた。
「おふたりはどちらでお知合いになられたの? お子さんは、今おいくつ?」
和花はこんな人の多い場所で話したくはないから、曖昧に微笑んで誤魔化した。
「またいつか、お話ししますよ」
樹もサラッと夫人の質問を避けていた。
彼はプライベートをペラペラと話す人ではないから、その点だけは彼を信頼できた。