あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~
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和花の大切な『我が家』に、樹が泊まっていくという。
樹がどうして急にそう決めたのか、和花にはわからない。
ふたりは玲生のためだけに結婚した形だけの夫婦のはずだ。
入籍してからも樹がここに泊まらなかったのはそのためだろう。
(今夜だってなにも起こるはずないわ)
彼にとって大切なのは玲生の存在だけなのだから、二度と和花に触れる気はないようだ。
樹の存在を意識しないようにしながら、和花は部屋に入ると玲生を子ども部屋のベッドに下ろした。
布団を掛けると少しむずがったが、直ぐに気持よさそうな寝息を立て始めた。
「このまま朝まで眠ってくれたら、安心だわ」
誰に言うともなく口にして、和花はリビングルームに明かりをつけた。
樹は玲生のそばにいたそうだったが、静かに寝かせるのが一番だと気が付いたのかリビンルームに足を運んでいる。
そしてソファーに腰を掛けてから、額に手をあてている。彼も疲れているのだろう。
お気に入りのアンティークの柱時計を見たら、もう十一時近かった。
和花も樹もパーティー会場にいた服装のままだ。
「なにか飲みますか?」
「ああ、ありがとう」
和花も喉が渇いていたので、冷たいものが飲みたかった。
この時間なら樹もアルコールの方がいいだろうと、ビールを準備する。
トレーにグラスをふたつとビールを乗せてから、樹の隣に座った。
「玲生は、よく発作を起こすのか?」
唐突に樹が聞いてきたが、和花はもう返事をする元気もなくてグラスにビールを注いだ。
「どうぞ」
「いつ、喘息だってわかったんだ?」
樹はまだ拘っている。今になって、玲生の病気が気になるのだろうか。
「もっと小さい時に、よく咳き込むことがあって。でも、この子の場合、大きくなったら治るだろうって言われてます」