あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~


「あなたの子だって、私の口からちゃんと言ってなかったものね。あなたも疑ってるの?」
「玲生は俺の子だ!」

悔しさを我慢しているのか、和花は目にいっぱい涙を溜めている。

「そうよ、あなたの子よ。時々顔を見に来て、遊んで、それでサヨウナラじゃ困るの!」

樹は和花を落ち着かせようと、そっと肩を抱いた。

「誤解させてしまったみたいだな。いきなり父親面をしたらいけないと思って遠慮してたんだ」
「あなたはいつもそう。言葉にしてくれなくちゃわからないのに……」




***



和花は自分でもわからなかった。
怒っているのか、悲しいのか心の中はグチャグチャだ。

それでも樹に言いたいことはすべて伝えてしまおうと必死だった。

「父のことがあった時、いきなり無視されるより、ちゃんと理由を伝えて欲しかった」

ずいぶん前のことだが、ふたりの関係が壊れたのはあの時からだ。

あれっきり樹と別れたつもりで関りを持たなかったなら、なにも問題は起きなかった。
だが一夜だけと思って愛しあった結果、子どもを授かった。そして玲生のためにと結婚してしまったのだ。

「私もいけなかった。いきなり入籍する前に、あなたとキチンと話し合うべきだった」

樹に肩を抱かれたまま、和花は訴え続けている。
樹はなにも言わずに、黙って和花の話を聞いてくれている。

離れていた時間が長かったのに、玲生が幸せになるならと樹と家族になることを選んだ。
でも、それだけでは家族に離れない。

「私は、あなたのなに? 玲生の母親? お飾りの妻なの?」

和花が本当に欲しいのは、樹の愛だ。




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