あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~
玲生が二歳になった頃、ハワードから日本では土地の価格がかなり下がっているという情報がもたらされた。
そのころ万里江がアンティークショップの支店を出したいと話していたので、母国である日本に店を出す計画がスタートしたのだ。
和花は、ふと思いついて銀座の父の店があったビルのことを調べてみたらやはり価格は下がっていた。
日本を去る時はブティックになっていたが、立地条件やビルの大きさが万里江の希望にピッタリだったのだ。
重厚な大理石調の外観や広さも、天井にゆとりのある設計まで万里江の希望通りだ。
二階部分につながる螺旋階段があると知って万里江は乗り気になった。
「そこに決めましょう!」
万里江のひと言で、フレデリックと晃大が動いてくれた。
そのおかげでビルを買い戻すことができたし、わずかだが和花も出資したので共同経営者ということになった。
万里江や晃大と協力して、画廊兼アンティークショップ『アートギャラリー M』を運営していくのだ。
ロンドンにいる万里江の代わりに、和花はアンティークショップを任された。
「日本に帰ることになるけど、大丈夫? ムリはしなくていいんだよ」
晃大は和花の気持ちを尊重してくれた。
ずっとロンドンで生きていくつもりだった和花だが、玲生を産んでから少し考えが変わってきていた。
玲生に日本を見せたい気持ちが強くなってきたし、大翔や佐絵子にも会いたい。
「ありがとう、晃大さん。私、玲生と日本へ帰ります」
「いいんだね」
「経営についてはわからないことばかりですが、どうかご指導ください」
万里江も商品の調達では、全面的に協力してくれるという。
また新しい世界に、和花は飛び込んでいくことを決めた。