あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~
  


***



(うまく笑えているだろうか)

四年ぶりに日本に帰ってきた和花だが、あれこれ頭の中でシミュレーションしていたにもかかわらず、最初からこの試練だ。

まさか、ギャラリーのオープニングパーティーに樹が来るなんて思ってもいなかった。
和花の名前はいっさい表に出さなかったし、もちろん招待などするはずもない。

(どうして……)

和花の緊張が伝わったのか、万里江が声を潜めて聞いてきた。

「和花、どうした? イヤな客でも来た?」
「いえ、チョッと昔の知り合いがいたので……驚いてしまって」

微笑んで誤魔化そうとしたが、万里江にはわかったらしい。

「はあん……私、なんだか視線を感じてたのよね」

万里江は和花を見つめる熱い視線に気が付いていたようだ。

「例の人?」

悪戯っぽい目をして、小声で和花に尋ねてくる。

「今はやめて、万里江さん」

大勢の招待客がいる場所だからと和花は呟いた。


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