あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~
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(うまく笑えているだろうか)
四年ぶりに日本に帰ってきた和花だが、あれこれ頭の中でシミュレーションしていたにもかかわらず、最初からこの試練だ。
まさか、ギャラリーのオープニングパーティーに樹が来るなんて思ってもいなかった。
和花の名前はいっさい表に出さなかったし、もちろん招待などするはずもない。
(どうして……)
和花の緊張が伝わったのか、万里江が声を潜めて聞いてきた。
「和花、どうした? イヤな客でも来た?」
「いえ、チョッと昔の知り合いがいたので……驚いてしまって」
微笑んで誤魔化そうとしたが、万里江にはわかったらしい。
「はあん……私、なんだか視線を感じてたのよね」
万里江は和花を見つめる熱い視線に気が付いていたようだ。
「例の人?」
悪戯っぽい目をして、小声で和花に尋ねてくる。
「今はやめて、万里江さん」
大勢の招待客がいる場所だからと和花は呟いた。