あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~


『だあれ?』
『ママのお友だち。さえこおばちゃんよ。仲良くしてね』
『うん、わかった』

大泣きしている佐絵子を珍しそうに見ていた玲生は、すんなりと受け入れた。

『おばちゃんじゃなくて、さえこちゃんって呼んでね』
『は~い』

ママのお友だちといえば、万里江やジョアンナと同じだと解釈したのだろう。玲生は佐絵子にすぐに懐いた。
佐絵子も玲生から離れたくなさそうで、しばらく一緒にミニカーで遊んでくれた。

和花は樹に秘密で出産したことは、後悔していない。
出産を後悔したら、妊娠までが罪のようになってしまうのが嫌なのだ。

和花が愛した人の子だ。
『抱いて欲しい』と頼んだ夜に授かった子だ。

でも樹に妊娠したことを伝えていない以上、父親の名は誰にも言えない。

(それでもかまわない)

堂々とひとりで玲生を育ててみせると、和花はあらためて決意を固くした。


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