あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~
アンティークショップの招待客を見送っていたら、かなり遅い時間になってしまった。
画廊ではまだ晃大と男性客が盛り上がっていたので、先に部屋へ帰ることにする。
和花は疲れた身体を引きずるようにして、画廊のビルの三階にある自室に戻った。
「お帰りなさい」
「高原さん、お世話になりました」
ベビーシッターの高原美雪が遅くまで時間延長して玲生を見てくれていた。
「玲生くん、お利口でしたよ。もうよく眠っています」
「今夜は遅くまですみませんでした。またお願いします」
仕事の間はどうしても玲生を預けなければいけない。
寂しい思いをさせているかと胸が痛んだが、ひとりで育てると決めた以上、仕事も大切だ。
高原が帰ってから、和花は玲生の部屋をそっと覗いた。
子ども用のベッドの中で、丸くなっている小さな我が子。なにかいい夢を見ているのか、笑っているようだ。
幸せそうに眠っている玲生を見ると和花はホッとする。どんなに疲れていても、この子がいるからまた明日も頑張れる。
「ただいま、玲生」
和花は、そっと柔らかな頬にキスをした。
今夜はまだ眠るわけにはいかない。遅い時間だが、万里江との約束があるのだ。
樹がパーティーに来ていた以上、玲生の存在を知られる危険はあるしこれからのことも考えなければいけない。