あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~
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そして週末、井上と莉里はふたりだけでギャラリーを訪ねていた。
莉里のお目当てはアンティークショップにあるドレスやアクセサリーらしい。
「ちょっとパーティーに着ていくものを探したいの」
「夜のパーティーですか?」
ショップの店員はいくつかドレスを莉里の前に並べている。
「迷うわ~。どれがいいと思う?」
井上は相談されても正直よくわからなかった。
「莉里さんなら、なんでも着こなせますよ」
上手にその場を切り抜けて、莉里がドレスに合わせてアクセサリーを見ている間に井上はスタッフにオーナーの女性のについて話しかけてみた。
「先日のオープニングパーティーでお見掛けしたんですが、お綺麗なオーナーですねえ。アンティークのドレスがお似合いでした」
莉里のドレス選びに引っ掛けてみたのだ。
「ありがとうございます」
「ロンドン帰りだって噂を聞いたんですが、ホントですか?」
「はい」
優秀なスタッフを揃えているようで、なかなかガードが堅い。
井上がさり気なく尋ねても、大した情報は得られそうになかった。
彼が情報収集を諦めかけた時、店の入り口から元気な男の子が飛び込んで来た。
「ただいまあ~」
「あら、玲生くん。お帰りなさい。」
三歳くらいだろうか、とても愛らしい子だ。
その笑顔を見ているだけで、こちらも口角が自然に上がってくる。
「こら、玲生。お店から入ったらダメでしょう」
男の子を追いかけるようにして、女性が駆け込んできた。
オーナーの奥村和花だった。
この前の優雅なドレス姿ではなくカジュアルな服装で、別人のようにも感じるくらい明るいイメージだ。
「あ、いらっしゃいませ。ごめんなさい。お騒がせしてしまって」
男の子をサッと抱き上げて、女性はもう一度正面から出て行った。
ビルのどこかに裏口があるらしい。