あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~


男の子から話の糸口を見つけた井上は、ここぞとばかりにスタッフに話しかけた。

「すごく可愛いお子さんですね~」
「はい、オーナーのお子さんなんです。とっても愛らしいんです」

「お名前は、れおくんっていうんですね」
「ロンドン生まれなので英語も喋れるんですよ」

やはり愛くるしい子を話題にすると、スタッフの口も軽くなる。

「みっつくらいかなあ?」

莉里も話に加わってきた。

「あんまり可愛いから、モデルとかアイドルとかになっちゃいそうですね」
「お客様から、今にスカウトされるんじゃないかってよく言われるんですよ」

女性目線で、話は膨らんでいく。

「きっとパパもイケメンなんでしょうねえ」

莉里の質問に、スタッフは喋り過ぎたと思ったらしい。

「失礼いたしました。商品のご説明が途中でございましたね」

上手く話を切り替えられてしまった。

莉里がまたドレス選びを始めたので、井上はこっそり聞いたばかりの情報を樹へ送った。

『オーナーの奥村和花には三歳の息子がいます。ロンドン生まれで、名前はれお。漢字は不明。メチャクチャかわいい子でした!』


それを見た樹の心中を、井上は知らない。



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