あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~



***



外遊びから帰ってきた玲生は、部屋へ入るなり咳き込み始めた。かなり苦しそうだ。

「さっきまで元気だったのに」

シッターの高原も驚いている。

「時々はコンコン咳くこともありますが、こんなに咳き込むのは初めてですね」

和花は玲生の背をさすってみたり、水分をとらせようとしてみたりするがなかなか止まらない。

「和花さん、近くに小児科があります。土曜日の午後も診察してくれるところなので行ってみませんか?」

見かねた高原が医者にかかることを勧めてくれた。

「高原さんがご存じのドクターですか?」
「うちの子にもアレルギーがあって、ずっとお世話になっていた先生がこの近くに開業されたんです」
「それなら、安心です。紹介してください」

さっそく高原の案内で、和花は玲生を連れて部屋を出た。
診療所はタクシーで数分の距離にあるビルの一階部分にあって『ごとうファミリークリニック』と入り口のドアには書かれている。

中に入ると、水色の壁紙に白い雲が浮かんでいて夢のある待合室だ。

午後の診察が始まる時間だったので、すぐに受診できた。

診察室の中も明るい雰囲気で、診療所とは思えない。
ドクターの後藤や看護師は白衣ではなく、お揃いの水色のトレーナーを着ている。

玲生は咳き込みが続いて機嫌が悪く、和花が抱いていても診察を嫌がった。



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