あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~
和花は次第に肩から力が抜けていくのを感じた。
ロンドンでは万里江たちに守られていたから、東京に戻ってからひとりで頑張りすぎていたのかもしれない。
「今年は初めての日本の冬すから、寒暖差のアレルギーが出たんでしょう」
後藤がのんびりと話を続けた。
「寒暖差?」
「はい。それで風邪気味になったから、咳喘息がちょっと酷くなってます」
和花にもわかりやすいように説明してくれるのがありがたい。
「治りますでしょうか」
「玲生くんの体質ですからクスリを飲めば回復ってわけにはいきませんが、暫く吸入に通っていただけばずいぶんよくなると思います」
後藤医師の言葉に、和花はホッとした。
「ありがとうございます」
「私はこのビルに住んでますから、夜中に急変した時はご連絡下さい。何時でも吸入に来ていただくことは可能です」
「わかりました。これから玲生のことよろしくお願いします」
玲生の主治医は後藤に任せたいと和花は決めた。
待合室に戻ると、待っていてくれた高原に診断結果を伝える。
「本当にいいドクターを紹介して下さってありがとうございます、高原さん」
「私も玲生くんが元気になってくれたら嬉しいし、後藤先生なら安心して玲生くんをお任せできると思いますよ」
万里江たちハワード一家、佐絵子と大翔やシッターの高原さん、そして後藤ドクター。
和花が玲生を育てていくうえで、大切な人がまた増えた。
父親はいないけれど、その変わりに玲生を支えてくれる人は大勢いる。
これからどんどん玲生を愛してくれる人を増やしていけたらと、和花は考えるのだった。