砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
「If you don't like the taste of that coffee, you won't need to be here any longer.」
〈コーヒーが口に合わないのなら、これ以上ここにいる必要はないな〉
あたしをお姫さま抱っこしたまま、彼はさっさと出口へと歩いて行く。
——えっ、えっ、ええええぇーっ⁉︎
湧き上がった女たちの歓声は、止まることを知らない。
今やテントじゅうにわんわん反響して、彼でなくとも姦しいこと限りなかった。
喧騒の中、小走りであとをついてくるファティマさんに、あたしは「夫」の腕の中から訊いてみる。
こんなところから彼女に尋ねるのは、こっ恥ずかしい以外の何物でもないけれど、どうしても気になる。
しかも、声を張り上げないと聞こえなさそうだし。
「Hey, what do you all call your husbands?」
〈ねぇ、みんなは自分の夫のことをなんて呼んでるの?〉
「We call my husband "زوج".」
〈わたしたちは自分の夫を『زوج』と呼びます〉
——『ザウジ』って発音でいいのかな?
アラビア語は聞き慣れていないから、ホントに難しい……
ところが、当の「夫」からは、
「You don't have to call me that, my Lulu.」
〈私の真珠、そんな呼び名をしなくていい〉
きっぱりと、言われてしまった。
「ラジュリーと呼べ」
これだけは、日本語だ。
おそらく砂漠へ来る道中に、ムフィードさんから教わった言葉なのだろう。
——もしかして……
「第三夫人」のあたしは、夫のことを「ザウジ」とは呼んではいけない存在なのかもしれない。