砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
この家のmistressがguestsを迎えるために設けられたリビングルームから「探検」することにした。
先ほどのマーリク氏が使っていたマスタールームにあったリビングルームの広さとは較べようもないが、あたしが東京の天沼で一人暮らししていたワンルームの部屋が、玄関からベランダまで丸ごと入ってしまいそうだ。
マーブル模様の代理石の床に敷かれた円形のペルシア絨毯には、中央に大きくメダリオン柄が織られている。
その上には、まるでアンティークの美術品のような布張りの長椅子が一つだけではなく数脚置かれていて、その周囲には美しい装飾が施されたセンターテーブルやサイドテーブルがあった。
——ミスター・マーリクの部屋もそうだったけど、お金持ちのリビングルームって、やたらとソファやテーブルがあるのよねぇ……
ど庶民と較べるまでもなく、それだけお迎えするguestsが多い、ということなのであろう。
ちなみに、イスラム教徒の家では、男性をもてなす部屋と女性をもてなす部屋は別にしなければならない。
そして、一家の主人が男性側のhostを担当して奥さんが女性側のhostessを務めるため、それぞれにリビングルームが必要となる。
その女性側のリビングルームがこの部屋、ということだ。
いくつもあるセティはどれも、座面と背面に滑らかな手触りのカル◯ィエレッドのベルベットが用いられ、マホガニーのなだらかなアームには精巧な文様が彫られていて、それらは優美なフォルムの猫脚によって支えられていた。
いかにも高貴な女性が好みそうなハイセンスな意匠である。
早速、腰掛けてみて座り心地を堪能したいところだが、食事の時間までどのくらいかわからない。
なので、ほかの部屋をチェックするのが先だ。
あたしは奥の扉に向かって歩いて行く。