恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】

イルカのショーの前は結構な人が集まっていたから最前列ではないものの私たちも近い距離にいた。

まだきつく握られた手に目を向ける。
離してくれないのはわかってるけど、彼の期待に応えられないことが切なくなる。
自然と俯いてしまってせっかくのイルカのショーが楽しめない。

お姉さんがショーの説明をしている。
最前列の人たちは水しぶきがかかってしまう可能性があることを伝え、ショーが始まった。

人間の言葉などわからないはずなのにどうしてこんな芸が出来るのだろう。
合図したら高く飛び、私たち観客が感嘆の声を上げる。
もし、千秋さんとここにきていたら…と考えてすぐにそれ以上を考えるのをやめた。


「わ、」

最前列ではないものの水しぶきが盛大に飛んできて私と夏希君もそれなりに濡れた。

「大丈夫?」
「うん、大丈夫。ふふ、すごい濡れちゃった」
「だな」

夏希君が緊張を解いたように笑みを浮かべた。
私もその笑顔を見て笑った。その笑顔はやっぱりどこか千秋さんに似ていた。
兄弟なんだなって思った。
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