恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「兄貴が本当に桜子のこと渡したくないなら、何が何でも今日のデートにはいかせないと思ったから」
「…夏希君、」
「俺なりの優しさ。でも兄貴はズルいよ。桜子を見送ったくせに結局こうして目の前に現れてさ」
「そうだね、ズルいかもしれない…でも、桜子が選んだのならって思った。…いや、思いたかった。だけど、ダメだった。頭では理解出来てるのにこうして連れ戻しに来ちゃったから」
千秋さんが私に目を向ける。
「夏希のことが好きだとしても―…君は契約上の妻だよ。俺から離れないでほしい」
「…千秋さん、」
「狡いよね、でもそのくらい困るんだ。俺の前からいなくなったり、他の誰かを好きになったら…嫌なんだ」
その瞬間、夏希君の手が私から離れた。
同時に彼を見上げた。
夏希君は、はぁと大きくため息を吐いていった。
「言っとくけど俺はまだ諦めないから」
「…」
「でもいいよ。今日は無理に誘ったデートだったし、解散」
「夏希君」
夏希君はそう言って、車のカギを取り出しそのまま運転席のドアを開ける。
でも、ふと何かを思い出したかのように顔を上げて口を開く。
「あ、そうだ。キスのことは悪いと思ってないから」
「っ」
「お前が無防備過ぎんの」
そう言って車に乗り込み走り去る。
千秋さんが「キス?」と怪訝そうに呟く。