恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
千秋さんが帰宅したのは、20時過ぎだった。
できるだけ早く帰るようにしていることを私は知っている。いつも遅くなってごめんね、そう言って眉尻を下げる千秋さんを愛おしいと思うし、旦那様として最高だと思う。

「おかえりなさい」
「ただいま。遅くなってごめんね」
「いえ。今、あたためますね」

今日は朝から色々とあって気疲れもあるのだろう。
珍しくため息を漏らす千秋さんの声を背中で感じながら作っておいた料理を温めていた。

それらをダイニングテーブルに並べる。

私は先に夕飯を食べてしまったから千秋さんの分を用意するとそっとその場から離れようとする。
と。

「どうして離れるの?」

そう言って、私がここから離れようとするのを制する千秋さんの声に私の背筋が伸びる。普段よりも言い方がきついような気がして、私は仕方がないので彼の前に座る。

…普段だったら何も言わないのに。

「何かありました?」
「何もないよ。でも、君のアルバイトについて、ちゃんと話そうと思って」

私は今日の車内での発言を思い出しつい、顔を歪めてしまう。
私は腰を浮かせて座りなおした。
千秋さんはいただきます、と言っていつ見ても綺麗な箸の動かし方、持ち方を私はじっと見る。

「私にも、話したいことがあります」
「話したい事?アルバイトのことじゃなくて?」

いいえ、と言って私は千秋さんを見据える。


< 208 / 282 >

この作品をシェア

pagetop