恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
―挨拶当日

私は朝から緊張してずっとリビングをウロウロと歩き回っていた。
千秋さんが何度もそんなに緊張しないでいいよ、というがそう言われて緊張が解けるのならこんなことはしていない。

座っていられないほど緊張したのはいつぶりだろうと記憶を辿ってみるけど思い浮かばなくて人生で一番緊張しているかもしれないと思った。

今日は千秋さんからおすすめされたワンピースを着ていた。値段は知らないけど、おそらく結構お高めなのではと思った。
紺色の総レースのワンピースはエレガントで落ち着きもあるから普段は着ないけどこういう日にはピッタリかもしれない。

「桜子、やっぱりそのワンピースとても似合うよ」
「ありがとうございます…」
「そんなに緊張しないで。大丈夫、君が心配することは何もないよ」
「…はい」

千秋さんの包容力のあるそのセリフに自然に笑みがこぼれる。
千秋さんは全く緊張していないようで、朝から普段通りに朝食を食べていた。
もちろん私は食欲など全くない。


午後になり、私たちは一緒に家を出た。
コートを羽織って普段通り私に笑みを浮かべる千秋さんにおかしなところはないけど、どうしてだろう。

いつもとは違う雰囲気を纏っているように感じた。
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