恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
幼少期にいい思い出はないけれどその時に助けてくれた人たちは一生の友人だと思っている。

「大丈夫なの?」
「ああああー大丈夫かと聞かれたら大丈夫ではないけど…あああ…」
「とりあえずこれ、」
「ありがとう」

小学生のころからずっと友人である涼森 葉月(すずもり はづき)の家で彼女が出してくれたホットコーヒーが湯気を出してテーブルの上に置かれた。コーヒーカップに手を伸ばしてゆっくりと喉に流し込む。


「なんか力になりたいけど…今回のはさすがに」
「ううん、もう十分すぎるからさ」
「…どうしようね」
「はぁ…」

実は先月勤めていた会社が倒産した。
私たちの在学中は(特待生で学費タダで国立大学を卒業した)就職氷河期で本当に就職活動には苦労した。
H橋大学、K都大学…T北大学…優秀な大学を出ても地方の銀行1社内定がやっと…とかそんな話は珍しいことではなかった。

「25歳…はぁ、さすがに今回はなぁ。倒産くらいならいいんだけど」
「いいの?!それだけでもやばいよ?」
「いやぁ、今まで全部乗り越えてきたからこのくらい大丈夫なんだけど」

…倒産、だけならここまで悩まない。
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