恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「なつ、き…君?」
「何?」
「何って…手、」
何が起こっているのか理解できているはずなのに…体が動かない。
一瞬怖くなって体を震わせてしまったけれど今は不思議と怖い気持ちが消えた。
千秋さんと同じように大丈夫だった。
「桜子のこと、好きなんだけど」
「え?!…え?!」
「ずっと忘れられなかった。誰と付き合っても全然忘れられない」
「…でも、私…結婚してるんだよ?!不倫になるんだから…―」
そう言いかけて私は口を噤んだ。
そうだ、契約結婚だった。
誓約書には―…
「なんで?誓約書にはなんて書いてあるの」
「…それは」
「今日はそれを見せてもらいたくて来た」
「…」
「兄貴の話しぶりじゃ、お互い恋愛はしてもいいって感じだし。詮索しないとか記載してあるんじゃないかなって。どう?当たってる?」
「…」
「無言ってことは肯定してるってことでいい?」
夏希君は頭がいい。おそらくほとんどわかっていてここへ来ているしわかっていてその質問をしているのだと思う。