コトノハ

ともしびちょうの海は学校から数メートルもない。水灯りの町では水は神聖であり象徴すべきもの――別に禁止しているわけでもないのだが、誰も不用意に近づいたりはしない。私をのぞいては。


「あ……水蝶だ。わーきれい」


陽光に煌めく水蝶の群れに思わず感嘆の声をあげる。水辺に生息している幻想種の一種で、穢れのない美しい場所を好む。まるでお伽話に出てくる蝶の夢のようだ。思わず顔が恍惚としてしまうのは、こういう時だけ。



こつんと何かに足先が触れたことに気づく。水蝶に無我夢中で気づかなかったのは痛いが、気を取り直して砂のかかったソレを拾ってみる。



――ガラスの本?


置物か何かだろうか。普通に考えれば読み物としては考えにくい代物だ。


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